「調布市行財政改革アクションプラン」における公共施設(図書館)の再配置計画に係る考え方について

平成17年2月15日
調布市立図書館協議会

はじめに

調布市は、平成16年2月に策定した「調布市行財政改革アクションプラン」において、公共施設再配置計画の策定をすることとしており、図書館分館も26か所の社会教育施設の一つとして、この計画策定の対象としております。

この計画は、主に次の観点から、公共施設の見直しを行うものと受け止めております。

  • ○ 市内に点在する施設の配置を見直し、平成17年度末までに公共施設の配置の在り方について提案する。
  • ○ 多様なニーズと利便性に配慮した機能の複合化を図る
  • ○ 設置当時の目的が達成された施設、利用者が長期減少傾向にある施設、現在のニーズに合わなくなっている施設は、複合施設への統合や、代替施設の設置を視野に廃止する。
  • ○ 跡地の有効活用の方策を検討する。

当調布市立図書館協議会は、この計画の策定に係る図書館分館網の見直しについて、今後のあり方を含め、図書館からの報告・要請を受けて協議を重ねてまいりました。

以下、その結果をまとめましたので、協議会としての意見を述べさせていただきます。

1 調布市立図書館の歴史

 

調布市立図書館は、昭和41年6月に、中央館が開館し、以後、昭和44年の国領分館の開館を皮切りに、半径800mに1館、人口2万人に1館、二つの小学校区に1館の原則のもと、周辺住民の身近で気軽な「読書」・「学び」の場として、地域に根ざした図書館活動を開始しました。昭和57年に佐須分館を開館して以後、中央館と10分館からなる図書館網が完成しましたが、この間、平成5年10月には、貸出・返却・蔵書検索等の効率化を図るための全館オンラインによるネットワーク化も実現しております。更に、平成7年10月には、調布市文化会館たづくりの中に念願の新中央図書館が開館し、その後も、市民の要望に応えるべく、業務の見直しと図書館サービスの充実に努め、多摩各市の中でも高い活動実績を誇るまでに至っております。

2 調布市立図書館における分館の現状

調布市立図書館は開館当初から、次代を担う子どもたちに読書の喜びを伝えていくことを重視し、図書館網の中で、全館とも児童サービスに取り組み、地域内の学校や保育園・児童館などとの連携を図っております。特に学校においては、小・中学校図書館での専任司書の全校配置をはじめ、情報検索環境の整備、物流システムの導入などがすすむ中で、図書館分館との連携が一層強化されております。一方、図書館活動を数値的にみれば、貸出冊数も年々増加し、平成15年度の年間貸出冊数では、市民一人当たり12.2冊と、多摩地区の図書館ではトップとなっており、また、利用登録率も、市内全域にわたって、5割前後と高く、なかでも、住まいの近くにある分館の役割の大きさが、分館での児童や高齢者の登録率の高さに現れております。

現在では、図書館の全国的なネットワーク化がすすみ、近くの分館で国会・他自治体・大学などの図書館から、必要な資料が迅速に入手できるようになり、更に、分館にもインターネット端末が設置され、調布のまちで世界の最新情報を入手できるなど、図書館のIT化もすすみ、情報の公平な入手の場としての役割も高まってきております。

調べる機能に限界のある分館でも、中央図書館とのネットワークの中で利用者の相談に応えられる体制をとっており、来館が困難な高齢者や障がいのある市民への宅配サービスも、分館を窓口にして行われております。

3 調布市立図書館の目標とその実現に向けた分館の今後のあり方

図書館は、市民の「知る権利」と「学ぶ自由」を保障するために"いつでも、どこでも、だれでも"が利用できる図書館を目標に掲げ、市内の全域サービスを目指した分館網を整備してきました。

現在では分館も、高齢者の滞在型利用が増えており、子ども達にも気軽に利用できる身近な図書館として、引き続き、読書環境の整備に取り組むとともに、今後は、市民との協働により、次のような視点に立ったサービス展開が求められます。

  • (1)多様化・高度化する市民ニーズに応えるべく、豊かな資料や情報を収集・整備し、他機関等との連携により窓口のネットワーク化を図る。
  • (2)地域情報の拠点として、地域の生活情報や歴史資料などの収集・提供・発信に責任を持つ。
  • (3)地域住民や他機関との連携により、多様な活動を支援し、地域文化創造の拠点となる。
  • (4) 今後の分館施設の整備に当たっては、くつろぎとゆとりの空間、地域住民の活動・交流の場としての機能の充実を図る。
  •   身近な分館は水道の蛇口に例えられます。市内のどの地域に住んでいても、誰もが等しく、求める資料や情報について、蛇口をひねると身近で入手できるように、分館を情報のライフラインとして位置づけ、人々の暮らしに役立つために充実させていくことが、今後、ますます求められていきます。

4 調布市立図書館・分館の配置見直しについての見解

 

(1) 経過

図書館では、平成16年7月以降、各分館で行う利用者懇談会において、 利用者(市民)との意見交換を行うほか、図書館職員で組織するプロジェクトチーム・分館再配置検討会議を経たのち、当協議会に報告し、検討するよう求めてまいりました。

開会日時 内容
第1回 平成16年10月5日第2回図書館協議会 政策室行財政改革担当から「アクションプラン」の概要と図書館分館に係る施設再配置計画について説明を受ける。
第2回 平成16年11月9日第3回図書館協議会 図書館から分館利用の現況説明を受ける。施設再配置計画における分館の今後のあり方について、図書館協議会としての考え方をまとめる旨、求められる。
第3回 平成17年1月27日臨時図書館協議会 協議会としての基本的な考え方を検討。
第4回 平成17年2月15日第4回図書館協議会 見解文を決定。

(2) 見解

調布市立図書館の40年にわたる図書館活動をとおして、分館は、地域住民の生活上、不可欠な存在となっていることが、各種の統計資料などによる図書館利用状況や、利用者懇談会その他で寄せられた市民の声から明らかです。

当協議会としては、全国的な子どもの読書をめぐる憂慮すべき事態の進行、市民の高齢化などへの対応を考えるとき、歩いて行ける距離に図書館があることは、市民生活の充実、支援を保障するとともに、生活の質の向上が課題となる今後の社会にとって、益々、重要なものとなり、その機能の一層の整備・拡大こそが求められると判断し、次のように見解をまとめ、市に対し、賢明な対応を懇望するものです。

  • ア 調布市の現在の厳しい財政事情の中では、一部、図書館空白地域の住民が望んでいる増設は困難としても、既存の10分館の存続は堅持する。
  • イ 現在の分館は、地域住民のくつろぎ、交流、活動を保障する場としては、今後担うべき役割から見ると手狭であり、また、バリアフリーの条件を欠く分館もある。これらの機能の拡充、改善を可能にする条件がある場合には、あくまで図書館を中心・中核として、近隣の他の公共施設との併設、複合化の提案について、サービス向上の実現をめざし、検討していく。
  • ウ また、現在の10分館の配置で生じている地域的な偏りが、新たに示される施設再配置計画の併設、複合化などの案によって、修正が可能であれば、その条件を検討し、サービス地域の拡大を図る。
  • エ 分館を含む図書館網の見直しに当たり、最も留意すべき課題の一つに人的資源の整備・確保が挙げられる。今後に求められる図書館像を考えるとき、市民の学習意欲の向上と相まって、専門化・高度化する資料や情報の収集・検索、的確性かつ迅速性を求められる調査・相談等のレファレンス業務に従事する図書館職員に寄せられる期待は限りなく大きい。
    すなわち、図書館に配置される職員については、これまでにも増して、司書業務に係る専門的資質が求められることは明らかであり、その資質向上を図るための具体的かつ効果的な方策を早急に検討する必要があることはもとより、継続的に専任・専門職員の適切な配置を堅持していくことが望まれる。