令和5年度 調布市立図書館利用者懇談会(第1回)報告

  • 日時:令和5年11月16日(木)午後2時から午後3時まで
  • 会場:文化会館たづくり10階1002会議室
  • テーマ:図書館で「読める」をサポートします!
  • 参加者:調布市立図書館利用者1人、図書館職員6人
  • 内容(要旨)

(1)館長挨拶

 本日はご参加いただきありがとうございます。図書館のサービスについて説明し、ご意見ご要望をお聞きし、よりよい運営につなげられるようにという考えでこのような場を設けております。今年度は『図書館で「読める」をサポートします!』と題して、利用支援サービスにスポットを当てたテーマとなっています。午前中には利用支援サービス係の利用者懇談会を行いました。調布市立図書館は利用支援サービスについて内外からも評価いただいており、今後も力を入れていきたいと思っています。本日は忌憚のない意見をいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

(2)図書館で「読める」をサポートします!

 図書館で所蔵しているマルチメディアデイジーの実演を交えながら、図書館を利用することや本を読むことが困難な利用者へ向けたサービスについて、子ども向けのサービスを中心に資料を用いて説明した。

(3)懇談会及び意見交換

○=利用者、●=図書館

○読んでいる場所がわからなくならないように使用する「リーディングトラッカー」が図書館に用意してあるとは知らなかった。図書館にあるのは一行のシートだが、下敷きのような大きさのものや様々な色のものがある。蛍光灯の光で色が飛んでしまい文字が見えないようで、様々な色の中でも濃い紫など暗い色のものがよいという人が多い印象。

○子ども向けのLLブックの説明があったが成人向けも所蔵しているのか。
●所蔵している。知的障害のある方向け、特にヤングアダルト世代向けのものもある。(埼玉福祉会出版部『仕事に行ってきます』シリーズを見ながら)このシリーズは,障害のある方向けに朝起きるところから出勤して何をするといったことを写真やピクトグラムを用いてわかりやすく説明している。4階の子ども室にも配架しており,利用支援サービスに登録していない人でも借りることができる。
○仕事に関する本は,小学生はもちろん、進路を決める高校生世代が特に興味を持つ内容だと思う。高校生くらいになると幼児向けの本を読みたがらないので大人向けの本があるとよい。物流センターの仕事については一般の本でもあまりない内容だと思う。自閉症を持った方はよく働く場所なのでイメージがわきやすそう。
●図書館では特別支援学校に出向きおはなし会を行っている。中学生に向けてこの本を紹介するのもよいかもしれない。
○お仕事について考えるのは高校生からでもよいが、中学生から学校で作業の時間が始まるので、イメージさせるきっかけに使うとよいと思う。

●(バーバラ・エナンデル(2017)『美しくなりたいあなたへ』を見ながら)美容に関する本もある。この本は髪のお手入れやパックの仕方についても書いてある。
○図書館に所蔵しているものは市販されているのか。
●基本的には一般に購入できるものを所蔵している。

○利用者懇談会に参加していなくてもLLブックなどを読みたいといえば利用できるのか。
●もちろん利用できる。4階子ども室にもあるが、ほかの本と一緒に配架されているため探しづらいかもしれない。利用支援サービスコーナーにLLブックがまとめて置いてある。

○利用支援サービス係の部屋に行けば、資料を見たり借りたりすることができるのか。
●利用支援の登録がなくても、図書館の利用登録をしていれば、LLブック・大活字本・点字図書は貸出可能。図書館HPの蔵書検索画面の「HS」にチェックを入れて検索すると,利用支援登録をしないと利用できない布の絵本やマルチメディアデイジーもヒットする。
○HSは何の略か。
●ハンディキャップサービスの略。以前は利用支援サービスではなく、ハンディキャップサービスと言っていたためその名残。

○知的障害のある中学生以上の子どもがヘルパーとともに図書館へ訪れ、子ども室で絵本を選ぶのを「つまらない」、「自分の年齢に対して子ども向け」と感じる。そのような子に児童向けではないLLブックなどを紹介できたらよいと思う。例えば、知的障害を持つ方には写真がたくさん載っている図鑑が好きな方が多いのでそういった本があるとよい。また、生活をする上で料理をすることはかなり身近なこと。料理の本を好む方も多い。わかりやすい料理本があるとよい。ディスレクシアの子どもは「本を読まなくちゃいけない」と思って苦手意識を持ってしまう。自分で本を読むことができるという達成感を得てほしい。
●一般・大人向けの本の中にはわかりやすく書かれた本もある。ご相談いただければ、大人向け・児童向けに限らずご要望に合ったものを探すお手伝いができる。利用支援サービス係だけではなく4階のカウンターでも対応可能。

○学校ではデイジー教科書を使用している。学校から貸与されている端末にデイジー教科書が搭載されている。しかし、そこで読めるのは教科書のみのため、物語の本が読みたいのではないか。デイジー図書で物語というと、民話や日本昔話ばかりというイメージだが他にもあるのか。
●今は様々な本がある。現在デイジー図書化されていない作品も、要望があれば用意している。

○マルチメディアデイジーは文字を大きくできるか。
●可能。スピードを調整したり、背景と文字の色を変更することもできる。
○文字が大きくないと読めない人も多い。また、教科書はたいてい縦書きだが、どこを読んでいるのかわからなくなってしまうため、横書きの方が読みやすいよう。使用しているデイジー教科書は縦書きから横書きに変更する機能がある。本を読む楽しみを感じてほしい。

○自宅にタブレット端末はあるのだが、デイジー図書自体の貸出はしているのか。
●ディスクでの貸出をしている。データを取り込める環境がある方であれば、利用できる。また、サピエ図書館という、視覚障害者をはじめとしてた文字を読むことが困難な方に対して情報を提供しているところがある。登録に条件があるが、会員になればマルチメディアデイジーをダウンロードして利用することができる。調布市立図書館を通して会員登録することもできるので相談してほしい。

○一般に利用支援サービスや宅配サービスというと、視覚障害や聴覚障害を持った方だけが利用するものというイメージを持っていると思う。そうではないことをもっと伝えられる機会があるとよい。障害を持っている方は声を出してしまうこともあるが、少しくらいは大丈夫だと伝えたい。親は周りに迷惑をかけてしまわないか不安に思っている。そのため、図書館側は声を出してしまうことをわかっているし迷惑だと感じないこと、困ったら助けてくれることを広く知ってもらえればいいと思う。本が好きな子はたくさんいるが家庭で全部買って揃えることは難しい。何か書いたりする必要はなく、カードと本をもって窓口に行けば借りられるということをわかってもらえれば利用が増えると思う。
●小さいうちに図書館に通ってもらえれば、大きくなってからも「仕事終わりに来たよ」「日曜日だから来たよ」と言って一人で来てくれる。生活の一部にしてくれたらうれしい。
○行きなれていないと敷居が高いと思うが、行っても嫌な思いをせずに好きなものがある場所が確保されることは素晴らしい。そこで新たな出会いがあることもある。見たこともない場所に行くというのは怖く感じる。しかし、特別支援学校に子どもを通わせている親御さんは、「図書館の人が学校に読み聞かせに来てくれているということは、図書館に連れて行っても迷惑がられない」と思っているから行きやすい。
●誰もが安心して来館できる環境づくりが必要。こんな施設だったら利用したいというイメージはあるか。
○図書館は静かにしなければいけない場所、というイメージがある。子どもに質問されても説明するのがはばかられない程度で、多少話してもよい空間があるとよい。飲食できなくても座ってゆっくりできたり、暑い日には涼みに休憩できたりするようなところ。大きくなって自主的に図書館に足を運ぶまでは親が誘って連れてくる必要があるため、話せるスペースがあるとありがたい。

●市報2023年11月20日号の一面に、図書館を利用する上で困難な状況にある方へ向けたサービスが特集される。点字やマルチメディアデイジー、布の絵本などについて取り上げられている。それを見てきていただくきっかけとなればうれしい。