平成28年度 ハンディキャップサービス利用者懇談会報告

1 日時

平成28年11月1日(火)午前10時から11時30分まで

2 会場

文化会館たづくり6階601・602会議室

3 参加者

利用者5人(うち同伴者1人)、音訳者7人、点訳者5人、布の絵本製作者1人、社会教育指導員1人、図書館職員11人、その他1人
 

4 懇談会内容

(1) 出席者紹介

(2) 館長挨拶

調布市立図書館のハンディキャップサービスは全国的にも知られており、見学依頼がある。このような形で利用者の声を聴くということをやっている図書館はあまりない。これからも継続していければと思っている。忌憚ないご意見を伺いたい。

(3) 利用状況についての報告

平成27年度のハンディキャップサービスの利用状況について報告した。

(4) その他の状況報告

・図書館50周年記念事業の展示会、講演会の報告
・記念キャラクター(立体コピー配付)紹介
・記念製作「大きなかぶ」の紹介
・障害者差別解消法施行後の調布市の動き
・「ブレイルメモスマート40」、録音図書再生ソフト「Net PLEXTALK(ネットプレクストーク)」、「MyBookⅢ(マイブック スリー)」の紹介
 

(5) 利用者からのご意見・ご要望等(要旨)

○=利用者、●=図書館


○10年以上利用していて、図書館なしにはこうして楽しい人生を送ることはできないのではないかと思っている。普段対面朗読を利用している。例えば、新聞を読んでもらっていて、わからない言葉があると辞書で調べてくださり、大変な手間をかけていると思うが、そういったことをしてもらってもよいのか。
●対面朗読の良さは、直接面と向かってお読みするところで、わからない言葉が出てきたらその都度確認してもらうことができるもの。普段、利用者が疑問に思ったところを投げかけ、音訳者が辞書で確認するということをしていると思うが、それはとても理想的なのではないか。


○本だけでなく音楽CDも貸してもらい、対面朗読でその歌詞を読んでもらって、改めてこんなにいい歌だったのかということがわかったということがあった。本だけでなく歌の世界まで楽しめた。利用させてもらってありがたいと思っている。

 
○(録音図書について)90%は満足している。残りの10%は、アクセントが気になるものや、聴いていてその話がマイナスの方向へいってしまうようなものがある。そのようなときはすぐに返却する。そういうことはめったにないが、地方で製作したものをダウンロードしたものにそういったものが多い。聞き手にとってあまり心地よくないものは、話が自分の中で生きてこない。音訳されたものを、職員は一度聞いているか? 以前ひどいものがあり、持ってきたら、「これはひどいですね」と言われ、聞いてないのかなと思うことがあった。
●ダウンロードしたものはデータが入っているかどうかの確認も含めて、貸出前に聞いている。第一声からあまりにひどいものはやめることもあるが、ダウンロードできるものがその1件しかないということもある。万全ではなく申し訳ないが、なにかあれば言ってほしい。

 
○30年前から利用している。最初の頃は点訳も利用していたが、だんだん録音図書を利用することが多くなり、最近はDAISYやサピエ図書館をよく利用している。また、問題用紙に回答しなければならないときなどは、対面朗読を利用している。点字もDAISYも種類が多くなり、便利になって、特に不満だということはない。調布は音訳のレベルが高く、音訳者にはいつも感謝している。

 
○初めてこの会に参加した。こちらを利用するまでは、障害者向けの読書ツールなどは知らなかったので、初体験が多い。余談だが、自宅ではパソコンの画面を白黒反転にしてメールを打つなどしているが、インターネットのデータなどは、白黒反転といっても、カラー版を色彩の上で反転していて、次へすすむなどのボタンがあっても、白黒化してしまうと見える形で画面上に出てこない。その場になって先へ進めず困ることがある。新しい体験の中で、私の見え方からして、拡大読書器は、ちらちらしたり首が痛くなったりで、読書器と称しているが読書をするには不向きであるという経験をした。録音図書というものを知ってからは、専らそれにのめりこんでいる。最初、音訳という言葉に首をかしげたが、昔朗読と言っていたような読み上げのことであり、DAISY版が普及するようになってDAISY図書が実用化されてきた、だんだんとそういうことがわかってきた段階である。
個人的なことでいうと、例えばシリーズものを何巻まで読んで返したか、何巻からまだ読んでないかということをすぐ忘れてしまう。自分でメモをとればよいのだが難しいので、自分で自分の読書記録を検索できるようなシステムがあればありがたい。何巻まで読んだかと尋ねて注文するのでは係員の手を煩わせて申し訳ないので、自分で調べ上げて第何巻と注文できるような形をとりたいと思っている。
○(上記利用者の奥様から)主人がハンディキャップサービスを利用し始めてから、脳細胞の分裂が復活してきたかと思うくらい元気になってきた。食事の量も増えた。自分も認知症予防に運動したりするが、この音声の読書にも認知症予防の効果があるのではと思った。妻として非常に感謝している。
●実は、シリーズの何巻まで読んだかという問い合わせや、今読んでいるものを返したら次のものを貸してほしいという要望はある。図書館としては、本来、個人の読書履歴には関知しないことになっているが、ハンディキャプサービスにおいては、ご希望があれば、ある程度ご要望に応えるようにするということは従来のサービスの中でも行っている。ご自身でシステム上で確認したいということについて、10月のシステムの入替えで変わったところがあるため、館長から説明する。
●(館長から)読書履歴を残すことは、今回のシステムの入替えでできるようにし、図書館のホームページに機能として盛り込んである。機能的には、ご自分で管理していただくという前提で、今まで何を借りてきたかを確認できる。ただ、それが白黒反転等、個別の環境の中でその機能が果たせるかという検証はできていないので大々的におすすめはできない。奥様と相談しながらご自身のインターネット環境で見ることができるかやってみてもらい、逆に結果をフィードバックしてもらうと、図書館のほうでこうしたほうがいいというところがでてくるのではないか。申し訳ないが、逆に教えてもらえればと思っている。

 
○ある小説を音訳してもらったとき、大勢の人物を、声をわけて非常にわかりやすく音訳してくれた。とてもわかりやすくてありがたかったと言ったら、本当はそういうことはやってはいけないことになっていると言っていた。重要人物の区別をしてもらうととてもわかりやすい。無表情に読まれるより、ある程度は登場人物になりきった音訳の仕方というのも考えていただくとありがたいと思う。
●(社会教育指導員)おっしゃる意味はよくわかる。セリフなどは、セリフとして誰がしゃべっているかがわかるようにはしたいと思っているが、それをやりすぎると違和感がある方もいらっしゃるし、10人いれば10人の感想があるので、こうしましょうというのはなかなか難しい。それぞれの音訳者が考えて、ある程度表現できるところはされているのではと思う。
○想像だけで聞くので、変えてもらうとわかりやすい。
○(別の利用者から)読み聞かせなどはどうなのか。一人一人の声を変えてやっているのか。
●そこも難しいところ。やはり一人芝居になってしまっては読み聞かせとは言えない。本の世界を伝えるという点で、相手によって変わってくるところもある。
○(別の利用者から)今まで聞いた限りでは、あまりドラマチックにならなくても、役柄などはきちんと聞いていればわかるので、それは問題ないのではないかと思う。あまりドラマチックだと自分のイメージが崩れてしまう。
●いろんなご意見があるということ。ありがとうございます。

 
○カソリックの教会に通っていて、いろいろな資料をもらうが、そういった宗教的なものを対面朗読の時に読んでもらうことはできるか。役所では、ヘルパーに教会に同行してもらうことは難しいという問題があったので、宗教的なものは伺ってからと思い聞いてみた。
●利用者のお手持ちの資料を対面朗読で読むということは通常のサービスとしてやっているので、おっしゃるような宗教的なものであっても問題はないと考えている。
ヘルパーの同行について、保険を使ってヘルパーを派遣する場合は制約がある。買い物や病院など、生活のために必要と認められたものにしか同行することはできないことになっている。宗教的なことだからということではなく、限られた範囲でしか保険上のサービスは利用できないということだったのではないか。

 
○最近は映画の音声ガイドなどもある。普段美術館に行くことが多いので、将来的に、写真集や画集などの音声ガイドのようなものもできたらいいなと思っている。


*来られなかった方々のご意見から
○市報点訳版、とても読みやすい。これからも同じように続けてほしい。
○漢字をだいぶ忘れてきてしまっているので、例えば同音異義語が出てきた場合、漢字はどの漢字を使うのだったかと迷うことがある。
○音訳は大変な仕事だと思う。感謝している。調布で作ったものではないかもしれないが、DAISYを聞いていて気になったことが2つある。1つは、同音異義語の意味が分からないこと。本文中や短編のタイトルなど、注釈を入れてもらえるとわかりやすい。もう1つは、感情を殺しすぎている読み物が気になる。音訳者の解釈が入らないようにとの配慮を感じるが、やりすぎると聞きづらく思う。
○対面朗読で雑誌を読んでもらっているが、モデルのポージングなども詳しく説明してもらえるのが本当にうれしい。写真をきちんと表現してもらえるのがとてもうれしい。
○絵本の音訳では、絵の解説もつけてくれるとうれしい。読み聞かせでは文字しか読まない場合が多いと思うが、耳だけで聞くと細部を把握することができず、イメージがわかない。
●時間の関係で今回は一部の紹介としたい。いただいたご意見を基に、サービスの充実に向けて邁進してまいりたい。
 

(7) 音訳者からのご意見要旨

・なるべく利用者に満足してもらえるようにしたいと思っている。ご要望があれば小さなことでも聞かせてほしい。聞きやすい音訳に努めたいと思っているが、自分でも100%満足できたということはなかなかなく、日々悩みながらやっている。客観的な感想をいただくことで、自分では気づけなかったことも教えてもらえる。今後ともどうぞよろしくお願いします。
・うまく時間をとって、滑舌をよくして、早く読んでということを考えていると難しいが、できる限り頑張っていきたいと思っている。もし、もっとこうしたほうが良いといったことがあれば、おっしゃっていただけると励みにもなる。直すことが難しいこともあるが、努力したい。
・対面朗読で辞書を引く機会が多くあるが、ある単語について、自分で思っていた字が辞書には載っていないとわかり、発見があった。日ごろなんとなくこういうことだろうと流してしまっていることも多いが、対面朗読で意味や字を尋ねられることで辞書を引き、学ばせてもらうことが多くある。遠慮せずに言ってほしい。
・校正を担当している。音訳のはじめての読者として校正している。厳しくなったり、身内を保護するような感じでこれくらいはよいのではと急に優しくなったりしてしまう。改めて気をつけたい。同音異義語についても心して校正していきたい。
・対面朗読は、音訳をしていくうえで糧だと思っている。いろいろなことを教えていただくチャンス。機械と本とだけ向き合っているような作業の中で、生の声を聴けることはとても貴重である。こうした懇談会ででも、ぜひご意見をいただければと思う。
 

(8) 点訳者からのご意見要旨

・点訳を利用している方は少ないようだが、利用の様子がわかり、参加してよかった。
・点訳をする際、規則もあるけれど、どうすれば正確に伝えることができるかを考えながらやっている。悩むことも多い。どのように利用してもらえているのか、すぐ返答を得ることはできないので、点訳版の市報を待っている方がいることを聞けてうれしかった。点訳は音訳ほど利用がないのかもしれないが、必要なものだと思うので、努力を続けていきたい。
・同じ言葉の繰り返しが複数ページにわたって出てきたり、キャラクターの吹き出しが増えたりと、「ふくしの窓」や「市議会だより」の紙面が変わってきて、どのように点訳すればよいか考えることが多くなっている。ご意見をいただけると嬉しい。
・普段、読んでくださる方はいるのかと思うことがある。英語の本の点訳をした際には、利用者が見え、楽しい経験だった。
 

(9) 布の絵本製作者からのご意見要旨

・布の絵本は、障害のあるお子さんの利用を想定して作っている。図書館50周年記念の立体の「大きなかぶ」は、オリジナル作品で、型紙を起こすところから製作を始めた。子どもたちが触ってけがをしないよう素材に配慮したり、見栄えや触り心地を考えて作り方を工夫したり、私たちは子どもが触ったときの笑顔を思い浮かべながら製作している。布の絵本は大人が手にとっても心が和むものなので、機会があれば読んでみていただきたい。
 

(10) 閉会挨拶(副館長)

利用される方の声を聴くことが励みになり、血の通ったサービスが積み上げられていく。今後も、サービス向上のための蓄積となると思うので、機会あるごとに意見を寄せていただきたい。これからも、利用される方、協力者の方とともに図書館のハンディキャップサービスをつくっていければと思う。