平成29年度 ハンディキャップサービス利用者懇談会(報告)
1 日時
平成29年11月16日(木)午前10時から11時30分まで
2 会場
文化会館たづくり6階601・602会議室
3 参加者
利用者8人(うち同伴者1人)、音訳者4人、点訳者4人、布の絵本製作者1人、社会教育指導員1人、図書館職員9人
4 懇談会内容
(1) 出席者紹介
(2) 館長挨拶
毎年この時期に利用者懇談会を開催している。初めてお会いする方もいらっしゃると思うが、たくさんの方にお集まりいただきうれしく思っている。今日は日ごろ使っていて感じていることを率直にお話いただきたい。それが協力者の励みにもなる。調布の図書館ではハンディキャップサービスを比較的早い時期から行ってきた。最近は技術が進んできて、点訳・音訳ともに様々な形が出てきていて、職員も研究しながら取り組んでいる。自分が情報を得る、楽しみのために読書をする際にも、その方の受け取り方に合わせていけるようになってきている。先日の館長研修会ではユニバーサルデザインがテーマだった。ICTを使ってできることがたくさんあるが、その根本にある「どんな状況にある人でも」という考え方が重要だと感じた。硬く表現すれば人権として、知ることが人として大事なことだということをベースにしつつも、施設面をどうしていくか等も含め、情報を受け取る・伝える方法を考えていく必要があると改めて感じた。今回も色々なお話を伺えればと思っている。
(3) 利用状況についての報告
ハンディキャップサービスの利用状況報告を行った。
(4) その他の状況報告
DAISY再生専用機プレクストークPTN3の使い方実演。
(5) 利用者からの御意見・御要望等(要旨)
○=利用者、●=図書館
○ 利用者懇談会への参加は2回目。主にプライベートサービスのDAISY版を利用している。勝手なお願いを温かく受け止めていただき感謝している。今後ともよろしくお願いしたい。
○お世話になって感謝している。調布市立図書館の音訳は良いと聞く。先日英語の歌詞の点訳をお願いしたが、墨字原稿のスペルが間違っていたのに気付いてもらった。後に講師の先生がスペルを間違えたとおっしゃったが、点字版ではスペルが正しく修正されていたということがあり驚いていた。安心して点訳をお願いすることができる。それから情報提供ということでAbemaTVとGoogle Homeを紹介したい。
(Google Homeの実演)
○(他の利用者より)どれくらいの大きさですか。
●手のひらに乗るか乗らないかぐらいの大きさです。
○(他の利用者より)買うことはできるのですか。
○昨日購入しました。
○(他の利用者より)電源はどのようになっていますか。
○AC電源です。
○(他の利用者より)正式名称は何ですか。
○Google Homeです。
○(他の利用者より)自分で操作できなければ難しいですか。
○声で操作します。
○(他の利用者より)事前のセットも声だけでできますか。
○スマートフォンやタブレットで設定します。
○(他の利用者より)どの程度のことができますか。
○音楽を聴いたり、検索をしたりできます。簡単な単語も調べられます。
○感謝の言葉ばかり。勝手な注文にも、丁寧にきめ細かく対応してもらっている。一昨年から利用を開始した。視野障害があり、文字の読み書きが全くできない。DAISYを専門に利用している。読みたいものの注文に即座に対応してもらっている。この2年間での読書量がこれまでの人生において最も多かった。個人的に、ハードウェアの操作について疑問がある場合、ハンディキャップサービスで対応してもらうことはできるか。専門に対応してくれる人がいるのか、また間接的にでも答えてもらえるとありがたいのだが…。
●ハードウェアというのは当館で扱っている機械のことか。ご自身でお持ちのものか。
○家庭用のパソコンのこと。例えば画面を白黒反転させたり、大きな文字で表示させたりしたい。
●職員がわかることであれば対応できることもある。必ずしも読書に関わることだけではなく、目の代わりとして必要な情報を提供するお手伝いはしている。例えば機器の取扱説明書を音訳・点訳することもある。一緒にパソコンなどの画面を見ながら、ご自身に合うように設定したりすることもある。ハンディキャップサービスでは対応できないことも多いので、問い合わせ窓口を一緒に探すこともある。どこまで対応できるか、一緒にご相談しながら考えていきたいと思っている。
○ハンディキャップサービスを10年以上利用している。その間に入っていらした音訳者の方も立派になられるのを拝見している。今回、鉄道弘済会で表彰を受けられた方、おめでとうございます。対面朗読を主に利用している。対面朗読では楽しい時間を過ごしている。対面朗読のおかげで自分のハンデ、視覚障害であることを忘れる。対面朗読では新聞を中心に読んでもらっている。そのときそのとき、わからない言葉を丁寧に調べてもらえるところに対面朗読の良さがある。つい、興味のあることに対して自分の意見を述べてしまうが、丁寧に対応してもらい、それによって新聞の内容の理解が深まることもある。これからもよろしくお願いしたい。対面朗読は1回1回、全力投球でなさっていることがわかるので、健康にご留意され、これからもご活躍ください。
○娘が全盲、現在高校3年生。2年前くらいから対面朗読と点訳サービスを利用している。目が見えない以外は普通の女子高校生。情報収集はほとんど機械を使っている。iPhone、ブレイルセンス、プレクストークポータブルを使っている。特にiPhoneを使ってtwitterやキュレーションから情報を得ている。何でも機械で情報が得られるが、写真の情報は知ることができないため、好きなファッション誌などを対面朗読で読んでもらっている。何度も触って確認したいものは、点訳が有効。人との対話や紙の感触など、自然になるべく近いコミュニケーションを大切にしたいと考えている。大学では英語を学ぶ。これまで視覚障害者を受け入れたことのない大学なので、どうやって勉強していくかが課題。また相談することもあると思うがよろしくお願いしたい。
○利用者懇談会には初めて参加する。2年前目の病気で視野の中央が欠けた。前は見えるが読みたいところがピンポイントで見えないため、とてもストレスがたまる状態。若いころから朗読が好きで、読書を楽しんでいた。見えなくなり、人生の幸せの半分以上を失うと思っていた。市報ちょうふで図書館のハンディキャップサービスを知った。とにかく行ってみれば何とかなると感じ、期待を持って行ってみた。その場で機械やDAISY図書を借りて帰った。録音図書を利用することで、人生の喜びを取り戻すことができたと実感した。小さい文字が読めないことは思った以上に不便だが、本を読む喜びが戻ってきたことは本当に大きなことだと感じている。音訳者の皆さんにお礼を言いたい。これからもいい本をたくさん音訳して、読めない方の人生の喜びを作り出していってください。
○読書会に入っているが、見えにくくなっているので、DAISY図書がないとお話の中に入っていけない。音訳者には感謝している。15年前多発性脳梗塞となり、本を全部処分した。行間のあるものなら読めるかと大活字本を手に取ったが、何しろ種類が少ない。その後、ハンディキャップサービスを知った。大きな文字ならば何とか読めるので、今では発達障害の子どもたちに絵本の読み聞かせ活動も行っている。朗読教室にも通っている。年に1回か2回、舞台にも立っている。ハンディキャップサービスがなかったら、その気持ちになれなかったと思う。自分自身も朗読をしているので、音訳者の苦労もわかる。色々と注文を出すこともあるが、感謝している。
*来られなかった方々のご意見から
○仕事を離れたため、仕事に必要な資料の音訳を依頼する必要がなくなり、図書館から遠のいてしまっている。以前に1度だけ機器の取扱説明書の音訳を対面朗読でお願いしたことがあり、また新しく買った機器の取扱説明書をお願いしたい気持ちもあるが、敷居が高い。というのも、その時に担当してくださった音訳者は取扱説明書のようなものに慣れていない方だったのか、項目ごとに「これは読みますか?」と聞いてこられた。最初の自分の頼み方が悪かったのだと思うが、あまり何度も聞かれると、「読んでほしいのでお願いしたが、頼んでは悪いのかな」と思ってしまった。そういう資料を頼む方が少ないのだろうか。
●図書館としてはプライベートサービスとして取扱説明書のような資料も受け付けており、音訳も点訳も依頼される方がいらっしゃる。音訳の場合、対面朗読でというよりは、DAISYに吹き込むという御要望の方が多く、依頼をお受けした時に職員が不要な箇所を確認させていただいており、DAISYに入れた後も不足な部分等があれば修正させていただくようにしている。このとき受けていただいた対面朗読はもしかすると、図書館できちんと事前の説明をしていなかったかもしれない。対面朗読の方がその場でお互いに話をしながら、図や表などのわかりにくい部分も確認しながらお伝えできるというメリットがあるので、遠慮なく御要望をいただければそれに合わせて音訳者に読んでもらうことはできる。音訳者も利用者の御希望に沿うようにしたいと思ってくださっているので、遠慮なく御意見をいただきたい。最初にそのあたりのことも図書館から説明しておかなくてはいけなかったのだが、残念な思いをさせてしまい申し訳なく思っている。もし対面朗読だと気を遣ってしまうということであれば、プライベート音訳もお受けできますので、ぜひまた御依頼ください。
○今回鉄道弘済会の表彰を受けられた二人にお祝いを伝えて欲しい。
○市報ちょうふ点字版わかりやすい。楽しみながら読んでいる。
○利用者として音訳者に頼んではいけないということはあるか。例えば宗教的な本の対面朗読をお願いしてもいいのか。どんな内容のものでもいいのか。
●特にこれは音訳できないと図書館で決めているものはない。
○自分が通っている教会の資料を音訳してもらってもいいのか。
●プライベート音訳、対面朗読の場合にはプライベートなものを今現在も読ませていただいている。今お持ちいただいている資料で問題になるようなものはない。例えば、ご自身で通われている教会に音訳者の方をお誘いになるということは控えていただきたい。純粋にご自身がお読みになれないので読んでほしいということであれば問題はない。
○もし一人暮らしになったときに、公文書のようなものも対面朗読をお願いしていいのか。
●公文書とは役所からの文書ということか。
○はい。
●今現在も個人的なお手紙をお読みすることもあるし、市役所からの文書の内容をみてくださいと来館される場合もある。本来的には市役所からお送りする前に、相手が見えない方であればどのようにすればいいか考えなくてはいけないはずだが、現状ではなかなか難しい部分もある。必要な書類であれば対面朗読で対応させていただく。もしご心配なものがあったら、御相談いただき、できる範囲で対応させていただく。万一難しいものがあったら、対応方法を図書館内で検討させていただく。現状お持ちいただいているもの、今例に挙がったものは問題ないと考えている。
●(館長から)今の御質問は図書館がどこまでやるかという話にも関わってくると思う。例えば、極端な例を出せば、貯金通帳を読んでほしいとなった場合。そうなったときに信用できる人に読んでもらいたいと思うはず。図書館組織をそこまで信頼していただけるのか、信頼関係をどこまで持っていけるのかということが一点。図書館は利用者との関係において、外には洩らさないという信用があるという前提があってできること。そこは実は今悩んでいるところでもあるので、これはどうだろうかと御相談いただく中で、実際のケースを積み上げていくことになるかと思う。また、先ほど、パソコンの話もあったが、使いこなせるレベルまでもっていくのはなかなか大変だと思う。その支援は、まずできる範囲でさせていただき、取扱説明書があってもなくてもわからない部分は出てくると思う。その際はメーカーに図書館が問い合わせをして教えることができるかどうか、それはやってみないとわからない。やってみるが、ただし限界はある、時間もかかるということを了解した上で御相談いただければと思う。現場ではどうしたら求められていることに応えられるかということを毎日考えながらやっている。できることをさせていただき、それがどうだったか考えるということを繰り返している。
●利用者の方でパソコンが得意な方がいる。今もサークルをやっていらっしゃいますか。
○サークルは月2回、火曜日の午後行っている。今は世間もiPhone等に移行してきていて、そのような企画も考えているが、使ってもらう端末がまだ揃っていないので実行に移せていない。パソコンの教室には先生が3~4人いるので、やりたいことがあったら、御自由にいらしてください。総合福祉センターの4階でやっている。
●何時からですか。
○午後1時から4時です。
●参加希望の方がいらしたら、またお聞きして、御案内することもできると思う。
○高齢者が英語の勉強をしたいと思って(音訳等を)お願いしても、迷惑をかけてしまうかなと遠慮してしまうのだが、お願いしてもいいのか。
●もちろんです。お待ちしています。
(7) 布の絵本製作者からの御意見要旨
・長く続けていらっしゃる方が多いので、自分もなるべく長く続けていきたいと思っている。
・布の絵本は修理することが前提。どのあたりに修理が出るかということを念頭に置きつつ、使用方法に耐えられるように工夫を加えつつ、原本と違わず作らなければならない。1冊を仕上げるのに1年くらいはかかる。集中力と体力を維持しつつ、楽しみながらやっている。
(8) 点訳者からの御意見要旨
・過去に富山の大学に通っていた大学生を合計8年間、点訳でサポートした経験がある。ネットを介して授業で使用されるレジュメの点訳依頼がきて、授業に間に合うようにデータを仕上げるということを行っていた。そうしたことも現実にはテクニックとしてできるので、どのようなサポートを希望されるか聞いていただき、図書館・点訳者に御相談いただければと思う。
・お褒めの言葉をいただき、うれしく思った。英語点訳の講習会に出られなかったため、4月から個人レッスンを受けたが、その後すぐ英語の歌詞などの依頼をいただき、実践で練習することができた。皆さんが前向きに立ち向かっておられる姿を見て、私ももっと頑張らねばと力をいただいた。市報は紙面が増えたため、どのようにしようか試行錯誤をしている。より読みやすいようにと頑張っている。これからも是非利用していただき、私どもも頑張りますので、よろしくお願いします。
・市報点字版の利用が少なくなってきていると聞く中で、点字版がわかりやすいとの御意見をいただき、とてもうれしく思っている。プライベート点訳は自分たちも楽しみながら取り組んでいる。写真はどこまで説明するか悩みながら点訳した。今後も要望があったら教えてほしい。無理難題をやるのが私たちの仕事なので、遠慮なくおっしゃってほしい。
・昨日、学童保育の子どもたちに点字体験をさせる手伝いに行ってきた。子どもたちの興味津々の態度、楽しみながら点字を打つ姿勢に刺激を受けてきた。これからも頑張るので、よろしくお願いします。
(9) 音訳者からの御意見要旨
・何でも読めるように頑張って勉強したいと思っている。やわらかい内容の本でも、硬い内容のものでも、どんなジャンルでも構わないので色々リクエストしていただきたいと思っている。
・先ほどのGoogleのスピーカーもそうだが、どんどんデジタル機器が出てきて、皆さん上手に使いこなされていて、感心していた。反対に、音訳活動はとてもアナログ。なるべく皆さんに寄り添った活動をしていきたいと思っている。御意見・御要望を随時聞かせていただければと思う。
・聞いてくださる方あっての音訳だと思い、ここまで続けてこられた。機械がこれから読み上げていくのかとも思うが、写真や図や表は人の声でしか読めない、そちらにシフトしていかなければ、また勉強していかなければと思っている。
・拙い音訳をとても喜んでくださることが実感でき、うれしく思った。今日のお話を聞き、1冊でも多く読もうと励ましていただいた。
(10) 閉会挨拶(副館長)
昨年、今年と懇談会に参加させていただいている。情報交換もして、本当にいい懇談ができたと感じている。利用者・協力者に御参加いただき、いいお話を聞くことができた。電子機器が発達してきているが、やはり人の声の温もり、紙の感触が大切だと思う。どんなものでも引き受けますと言ってくださる協力者の皆様に支えられているということを改めて実感した。調布市立図書館のハンディキャップサービスは長い歴史があり、また利用者のお話にもあったが、音訳も質が高いと言っていただいている。それもこうした利用者懇談会があって、利用者の声を直接伺うことができて、協力者の方々がさらに頑張ってくださるということの積み重ねではないかと思う。今後ともハンディキャップサービスを御利用いただきたい。
先ほど職員から話をさせていただいたが、市役所でも墨字資料を送付してもいい方なのかどうかを把握して、どの方にも届くべき情報がきちんと届けられるように図書館も協力しながらやってまいりたいと思う。