平成22年度 調布市立図書館利用者懇談会(第2回)報告

  • 1 日時:平成22年11月18日(木)午後6時30分から午後8時まで
  • 2 会場:文化会館たづくり10階1002学習室
  • 3 テーマ:「私の図書館活用術~こう使っているこう使いたい」
  • 4 参加者:調布市立図書館利用者8人、図書館職員9人
  • 5 内容(要旨) 

(1)館長挨拶

今年は国民読書年を意識して活動をしている。また、平成25年度から調布市の総合計画が新たに策定されるのに向けて、図書館のありよう、サービスを考えていきたい。さまざまな意見交換をお願いしたい。

(2)参加者自己紹介

  • ○図書館を長く利用している。図書館の宅配ボランティアとしても活動中。
  • ○若葉町在住。若葉分館と中央図書館を利用している。
  • ○同じく若葉分館を利用している。
  • ○中央図書館だけを利用している。ボランティアとしてお手伝いしているほか、学校で図書館について勉強している。
  • ○中央図書館と富士見分館を利用している。
  • ○どうしても申し上げたいことがあり、今日飛び入りで参加した。
  • ○深大寺北町在住。大正生まれで行くところといえば図書館だが、今年の夏は暑くて満員の避暑館になっていた。深大寺分館は大風が吹いて屋根が飛んでしまって空が見え、大変だったことがある。今度建て替えするそうだが、自分のところからはどのくらい遠くなってしまうのか、いつまで通えるのか心配している。乗物を考えると中央図書館のほうがいいかもしれない。図書館に行くのは小説の類でなく、資料やデータを集めるため。理科系の本が多い。今日持ってきたのは、図書館で見つけた単行本で、削減といわれているが、氷山が溶け出すなんて嘘だというすごい内容が書かれている。こういう本は各図書館に置いて子どもたちにも見せてやったらどうか。
  • ○府中市在住だが、十歩歩けば調布で交通機関も調布なので、隣接市で相互利用ができるようになり嬉しい。国会図書館に行くまでもなく、いろいろ調査をしてもらい助かっている。図書館の歴史を調べてみると、戦前の図書館は本を借りるのに1冊いくらでお金を取っていたのが、戦後になって無料になった。公共図書館がこのようになったことを非常に嬉しく思っている。以前図書館で仕事をしていたが、公共図書館ではなかったので、普通の利用者の声を聞きたいと思って参加した。

(3)レポーターのお話 「私の図書館活用術」

  • ○(レポーターA) 中央図書館、国領分館、調和分館、染地分館のハンディキャップサービスボランティアとして本の宅配をしている。利用されるのは、闘病中の方、けがの方、産前産後の方、自宅で介護している方など、図書館に来られない方。50数人のボランティアが持ち回りで配達している。自転車で入間町の成城に近いところまで行くこともある。本を専用のバッグに入れてお届けし、2週間くらいして読み終わった頃にまた取りに行く。けがをして家の中で松葉杖で生活していた方が、次に行ったときには片方になっていたので、「良かったですね。どうぞお気をつけて」と言ったら、そのちょっとした一言が嬉しかったようで、図書館に感謝の電話が入ったことがある。また、嬉しいのは、若いお母さんが「見てください」と生まれたばかりの赤ちゃんの顔を見せてくれること。そういう方はじきに直接図書館に通うようになるので、長続きはしないが、あの赤ちゃんはどうしているかな、すくすく育ってほしいなと願う。お知り合いの方で足が不自由な方などがいらしたら、宅配サービスのことをお話して、そういった図書館の利用の仕方があることをお知らせしてほしい。それが図書館の活性化にもつながると思う。
  • ○(レポーターB) 立川市に住んでいて図書館が利用できなかったため、市役所で図書館のことを調べて調布の噂を聞き、昭和46年に引っ越してきた。図書館が利用できないところは人間の住むところではないと思い、調布に来て40年たち、引っ越してきて良かったと思う。私はただただ本が好きということで、何を調べるわけでもなく、何を書くわけでもなく、利用させてもらっている。80歳近くなるので、文豪の昔の作品はやめ、最新作家の最新の作品を読むことにしている。新しい本を発売日に予約して1番か10番くらいかで借りてすぐに読み、翌日には返している。どうしても欲しい本は買うが、買った本を子どもたちや孫たちが読むかわからないので、なるべく図書館を利用させてもらっている。夫婦で予約の枠が40冊あるが、常に満杯になっている。夫は古文書関係の資料を集めるのでお互いに融通し合っていろいろな本の予約をしている。村上龍の『歌うクジラ』という上下の本もさっそく読ませてもらった。これから話題になるだろう作品を一番最初に読ませてもらう喜びがある。これから先どれくらい読めるだろうと思うと、新しい作品を読みたいという気持ちがあって、ただひたすら午前中に富士見分館に通っている。中央図書館は週に1回ボランティアで来るときに利用している。私にとって、図書館のない生活は人生がないようなもの。ただただ好きというだけで、図書館のお世話になっている。

(4) 意見交換

○=利用者、●=図書館

  • ● レポーターの方に口火を切っていただいたところで、自分はこのように図書館を使っている、違った利用をしているという方、どうぞご発言を。
  • ○ 私からは、三つほどある。一つめはインターネットでの予約。友達と吉祥寺で待ち合わせて、家で料理を作ろうという話になり、その場でスペイン料理の本を携帯で予約して、ふたりで図書館に寄って予約の本を借りて帰って作ることができた。書店よりも本が潤沢にあるのでありがたい。二つめはマンガが充実していて、10冊くらいのマンガセットで借りられるのが嬉しくて、念願のシリーズものを全巻読むことができた。三つめは、最近自分が住んでいる調布について知りたいと思いはじめ、今日は住宅地図をコピーした。これからどのように自分の周りを知っていくか、まだ決めていないが、図書館を利用していろいろ知っていきたいと思っている。
  • ○ 午前中に清水眞砂子氏の講演会を聴き、先生が最後に「調布の図書館が素晴らしいことは前から知っていた。周りが民営化する中で地味だけどずっと頑張り続けている」と言われたのが印象に残った。それに関連して、読書会に携わっているものとして伝えたいのは、調布の読書会に15の市から参加者がいるということ。ほかの市でこういう読書会の体制を取ってくれるところがどれだけあるのか、ないのではと思う。また、こういう機会にぜひお伝えしたいのは分館の意義。染地分館の読書会には今年九十歳になった方がいらっしゃって、足が悪いので地域でなければ行けない、たづくりまでは無理だとおっしゃる。その方はお話や本の読みが深くて、齢を重ねているだけに教えられることが多い。体が不自由な方が分館だから行くことができる、分館は必要だなと思う。また、宮の下分館の読書会には、長年ご家族の介護をしながら、2時間ヘルパーを頼んで読書会に参加してきた方がいて、読書会という場があったから介護を続けられたとおっしゃっていた。人は本を読んで違う世界に行って救われることがあるし、仲間がいることで励まされることがあるとつくづく思う。読書会に参加し、勉強させてもらえて感謝している。
  • ● 午前中に児童文学の翻訳や評論で活躍されている清水眞砂子氏をお迎えして講演会を開催し、200人を前にお話ししていただいた。また、先ほど自分の地域を知りたいという話があったが、そういう方が増えていて、地図を片手に街歩きも盛んになっている。調布市立図書館には「市民の手によるまちの資料情報館」という活動があるので、ホームページをご覧になって、ぜひ活動に参加していただきたい。
  • ● 昔の調布の街並みを模型で再現するために図書館で調べたり、自分史を書くために地域の昔のことを調べたりする方がいる。地域のそういう資料を揃えることに力を入れていかなければと感じている。
  • ○ 今多くの方に求められているのは健康情報だと思う。日経テレコンの新聞記事でも1980年には5万件、90年には31万件、2000年には71万件に増えている。みなさんがそれだけ健康情報を知りたいということだろう。医療機関にかかって短時間にドクターに話された言葉が理解できないというとき、どこに情報を求めるかというと手近な公共図書館になる。健康情報のわかりやすい手引きを作っていただきたいし、気軽に聞けるような掲示、たとえば薬のことをもっと深く知りたいときには医薬事典があるという案内が欲しい。健康医療情報の関連で都立図書館ではこんなことをやっていますという掲示もあれば、気軽に相談に行ける。医療に限らず、育児に困難さを感じていて、検診には行ったけれどこれでいいのか、保健所に相談にいくほどではなくちょっと調べたいという母親にも手がかりとなるような健康情報の案内があれば市民が喜んで利用できると思う。
  • ● 関心の高いテーマについてどういった本で調べたらいいのかという案内、パスファインダーというものを置く試みをいろいろな図書館で始めるようになっている。
  • ○ 自分のところだけでは解決できないことも、大学の医学部の図書館や病院の患者さんのための図書館などと連携して、ネットワークをうまく作っていければいいのではないかと思う。医者や看護師に言われた用語がわからない、こんなことを図書館に聞きにいっていいのかというときにも掲示があれば気軽に利用できると思う。
  • ● 本の探し方の道標として、どんな順番で調べてどんな資料を見たらいいか、オンラインデータベースにはどんなものがあるというパスファインダーを準備中である。地図、法律情報、雑誌・新聞記事の探し方をテーマに予定していたが、健康情報も課題にしたい。
  • ○ 医療については確かに微妙な個人の問題がある。また、闘病記を揃えていても最新のものでないと、こういうものを読んだがどうでしょうかとドクターに話しても困惑される点があるので、選書が非常に難しいと思う。レファレンスもどこまでが限界か、医療図書館の勉強会もある。病院選びの本も常に最新のものがあるように選書に気をつけてほしい。
  • ● 前回の懇談会でも、インターネットでの予約を利用すると同時に、直接図書館に来て本棚をよく見て本と出会って選んでいるという話が出た。インターネットの時代になっても、新しい魅力のある本を入れて使える本棚にしていくのが大事だと思った。
  • ○ インターネットの情報はピンからキリまであるので、図書館では安心して使えるというオーソリティの情報を選んで置いてほしい。
  • ● 特に新しい情報が求められる分野については、心して漏れのないように図書や雑誌を選んでいきたい。
  • ○ 以前横浜市立図書館に行ったことがあるのだが、健康情報コーナーがとても充実していて、大きな本棚に闘病記から医学専門書、病院紹介の本、患者会のリストまで置いてあった。健康情報コーナーの担当者がいるらしく、その人が中心になって健康に関する情報を集めていて、調べやすくていいなと思った。
  • ○ パンフレットについても図書館のお世話になっている。図書館に関するパンフレット、地域の催し、うっかり捨ててしまった市報など、学びや地域の情報を得るのに、図書館配布のパンフレットやチラシを頼りにしている。
  • ● 本だけではなく、いろいろな情報を見やすく提供できるようにコーナーを整備していかなければと改めて感じた。
  • ○ 若葉地区の防災マップを作るために住宅地図をコピーさせてもらった。長男は国家試験を受けるためにたづくりの学習室を利用している。
  • ○ 孫がモスクワにいて、日本人学校の図書の時間を授業参観したことがある。孫が日本に来ているときにロシアがどう書いてあるか見たいというので、若葉分館に行って世界の子どもたちの本を見たら、「これ、ぜんぜん古いよね」と言った。モスクワの日本人学校には写真も新しい最新の本があった。国の実情が子どもたちにわかる本を置いてくれればと思う。
  • ● 参考になる話なので、調べ学習への対応も含めて考えていきたい。
  • ○ 現実にサッカーをしている子どもたちに聞くと、子ども室のスポーツコーナーのサッカーの本は今風でない、大人のサッカーの本のほうが面白いと言っていた。
  • ● どれだけフレッシュな本を置いていくか、同じ本でもどれだけ買い替えていくかというのは、資料費の問題がある。数ある本の中で何を選んでいくかは図書館のプロの力だが、まず本代がなければできないので、ご意見を受けとめ資料費獲得に努めたい。
  • ○ 質問。蔵書点検の不明図書はどんなものが無くなっているのか。金額はどのくらいになるのか。深大寺分館ではコンピュータの雑誌を手続きせずに持っていかれたことがあった。ページの切り取りなどもあるのか。
  • ● 不明になっているものは、小説、コンピュータの特定のソフトのもの、医療、法律相談など、年によって館によって違うのが現状。金額は不明図書の冊数に1500円をかけたくらいの額になる。
  • ● 無断持ち出し、雨の日の水ぬれ、ページの切り取りなどに対して、図書館ではマナーアップキャンペーンを実施している。
  • ● 蔵書点検の結果は各館で掲示している。
  • ○ 地域センターと図書館で配布しているチラシが違うが、連携はどうなっているのか。
  • ● 施設によって配布物が違うのは、配布元の意向による。図書館は来館者が多いのでスペースが許す限り、市の配布物は置いていきたい。
  • ○ でたらめな数字が出ている市の資料が図書館に置いてあることがあるが。
  • ● 市の発行物で気づいたことを知らせてもらえれば、そのセクションに連絡をして、訂正があるなら対応してもらうというやりとりはできる。
  • ○ 中央図書館の出口でブザーがなる装置を分館にも導入する予定はあるのか。蔵書の多い中央図書館の不明冊数が少ないのは、装置があるからだと思うが。
  • ● 予算の問題もあり、導入の検討はしていない。
  • ○ 毎年高校の同窓会で調布の図書館の話をしてくださいと言われる。宅配があること、新刊書が予約できて、それをサンダルばきですぐに行ける分館に用意してもらえるという話をすると、びっくりされる。そういう恩恵に浴してない人にとっては、おとぎばなしのように思える。
  • ○ レファレンス、あそこにいけばどこまでも追及してさがしてもらえる。都立図書館から取り寄せてもらって借りられるのが当たり前になっていることに、感謝感謝の気持ちでいる。本に携わっている人は何かが違う。人間が本から学ぶということ、そして目の前にいる人たちから学ぶということも含めて、あたたかさと広さと深さが違う。若いころはただ行って借りていたが、年齢がいけばいくほど有難味がわかってきた。高齢化社会になっていく中で、図書館はますます感謝する人が多くなって大事になっていくと実感している。
  • ○ 新刊を予約して8か月待ったことがある。そういう状況は緩和されないのか。
  • ● 8か月待ちの本を3か月待ちにすることは予算的にできないことではないが、同じ本がどれだけ増えてしまうかと思うと、図書館としては様々な本を集めておきたいというところに重きを置いている。
  • ○ 若葉分館は地域に密着していて、様々な協力をしてくれ、防災訓練にも参加してくれた。館長さんがこれだけ地域のために努力してくださっているのは素晴らしいと思う。
  • ● 若葉小学校の地区協議会に若葉分館の職員が参加している。そういう地域の中に図書館があると知っていただく機会にもなっているので、今後とも協力し合っていきたい。
  • ○ 寄贈をもっと活用してはどうか。今こういう本を求めていますというリストを作って、ホームページに貼り出してもいいのではないか。書店で購入して一度読んだらもういいという方も喜んでもらっていただけるかわからないので二の足を踏んでいると思うので。
  • ● 予約が多い本を提示して寄贈を呼びかけたことがある。予約への対応、市民に図書館を身近に感じてもらう方策として当時は取り組んだ。一方、図書館のベストセラー貸出批判もある。図書館と出版社は共存共栄で、出版社、書き手、編集者があって図書館が成立するものなので、もらっているということを前面に出すのはどうなのか。お持ちいただいたものはいただいている。
  • ● 調布の図書館は「買物籠をさげて図書館へ」という言葉にこめられたものを大事にしていきたい。図書館員の思いだけでなく、市民の方にもいろいろな場面で協力していただければと思う。