平成17年度 調布市立図書館利用者懇談会中央図書館第2回開催報告
- 1 日時:平成18年2月16日(木)午後2時から午後4時まで
- 2 会場:文化会館たづくり10階1001会議室
- 3 参加者:調布市立図書館利用者17人、図書館職員
- 4 内容(要旨)
(1)館長挨拶
雨の中お集まりいただき、また日頃から当図書館をご利用いただき、皆様に感謝しております。中央図書館では今年度2回目の利用者懇談会ですが、この時期の皆様へのご報告として、平成17年度事業の総括と、平成18年度に向けての図書館計画事業についてお話しさせていただきます。
平成17年度の報告としてまず1点目は、市民の皆様のご意見・ご理解・ご協力を得ながら、図書館として一定の経営方針が市議会において認められました。平成17年度における方針は、指定管理者制度は導入せず、中央図書館は直営、各分館は当分の間直営とし、分館10館体制を堅持する、との見解になっております。ただし、分館については、平成18年度以降、複合・多機能化が検討課題とされています。先日の市長のタウンミーティングにおいても、図書館の直営・民間委託の問題が市民の方々から出されましたが、分館を整理・統合して職員を減らし、コストダウンを図ることが今後の行政に必要とするものと、図書館は知のコモンズ・地域情報化の拠点・地域住民の身近な知の宝庫として、分館10館体制は堅持すべきとするものと、相対立する意見が出されました。この問題の継続検討・協議が必要であるといえます。
2点目は、文科省からの委託事業である、地域情報化事業についてであります。試行錯誤の段階であるため、歩みも遅々としたもので軌道修正・方向変換が行われております。今日の参加者の中にもいらっしゃいますが、ご指導、ご協力してくださる方々とともに、新年度以降も地域情報化の拠点としての図書館の将来像を検討・協議していきたいと思っております。新年度以降も、皆様のお力で当図書館をご支援いただき、意見交換の場では、忌憚のないご意見を伺いたいと思います。
(3)意見交換
○=利用者、●=図書館
- ○タウンミーティングについて疑問を感じている。自分も参加して、図書館についての意見を2点ほど述べた。しかし出席人数は、特別な集まりを除けば第1回目7人、第2回目8人、第3回目9人、第4回目7人と、調布市民21万人を代表する意見が出されたとは到底言えない。「タウンミーティング」という名称自体も、何を行うのかわからず、人が集まりにくい。
- ●図書館という単独の部署でのお答えはできないが、市全体としてご意見を受け止め、政策当局に館長を通じて報告させていただく。
- ○千葉県の図書館で新しい歴史教科書をつくる会の教科書を焚書したという新聞記事を見た。これを機会だと思ってさまざまな教科書を読んでみたが、自国の恥を晒さない新しい歴史教科書をつくる会のものが一番よいものであると感じた。右翼的なものも左翼的なものも図書館には置かれてしかるべき、両者の意見を読めなければならない。
- ●千葉県船橋市の図書館で起こった例で、つくる会関係者の著作物を除籍し、裁判となったという問題である。この件については、日本図書館協会が「あってはならないこと」との見解を示しており、調布市立図書館でもこのようなことがないようにもう一度業務について振り返った。教科書の内容については、図書館の役割は様々な立場、見解について資料を収集提供するものであり、教科書の内容を評価する立場ではない。調布市立図書館では、除籍も1人で行うのではなく、選定基準に沿った形で行っている。資料的価値が薄くなり、ぼろぼろになって使用に耐えなくなったなどの理由で除架・除籍するが、調布市立図書館で最後の1冊となるものは、必ず残すようにしている。決裁もきちんと上げている。教育委員会で教科書選定を担当する指導室に、ご意見は報告させていただく。
- ○図書館における除籍は、法の正当な手続きに基づいて行うものではないのか。先述の千葉県の場合について知りたい。
- ●全国の図書館には図書館法に基づく選定基準があるので、船橋市の図書館にもあるはずである。しかし、なぜそのようなことが起こりえたかは現段階では不明であり、回答しかねる。調布市立図書館については、図書館法に基づく選定基準に則った業務が行われてきたし、今後もそのように行っていく。
- ○新しい歴史教科書をつくる会の教科書は、不適切なものだという見解を持っている。神話のことが実際の歴史の一部のように書かれていることなどがその見解の理由である。先ほど教科書について教育委員会に報告するというお話があったので、このような意見もあるということをあわせて伝えていただきたい。
- ●ご意見のひとつとして報告したい。
- ○除籍について、もっと具体的なことを聞きたい。貴重な本をスペースの都合で廃棄することがあるのではないかと思うが、除籍基準と、除籍後の処理について知りたい。ある図書館の例で、「図書館友の会」という団体が除籍本をすべて引き受けてバザーを行い、その収益金を図書館に寄付する、という活動をしていると聞いたことがあるが、そのようなことについてどのように考えているか、意見を聞きたい。
- ●調布市立図書館では、1年に約7万冊を購入している。25万冊収容できる高架下保存庫も半分以上が埋まっており、選定基準に沿って廃棄していく必要がある。傷みが激しい・複本があるなどの理由で廃棄するが、先述したとおり最後の1冊は残すようにしている。除籍後の処理として、傷みの少ない児童書は保育園・幼稚園・小学校などに寄贈、図書館入り口にリサイクル資料として出す、紙資源という3つの方法をとっている。平成16年度の除籍は4万冊強で、うちリサイクル資料に回ったものは3万2700冊である。本来は都立図書館が保存の最後の砦であるが、都の財政難から書庫拡充ができず、廃棄が進んでいる。このため、三多摩の図書館では資料の保存についての対策を検討中である。
- ○前に地下書庫を見学した際、夫の研究分野(有機合成化学)の専門書が廃棄寸前だった。そのような細かい分野の専門書が同様の危機に晒されているのではないかと危惧している。一般利用のあまり見込めない特殊分野の専門書は、都立図書館に置いたほうがいいのではないかといった考え方もあり、選定や除籍が困難であると思われるが、どのように対処しているのか。
- ●調布市立図書館では利用が見込めない専門書が寄贈された時は、都立図書館などに同じ本がないか調査し、なければ必要なら寄贈したい旨を伝える。同じ本がある場合でも傷みが激しい場合や、雑誌のバックナンバーの欠号分であれば必要であるという回答が来ることもある。
- ○1、2回しか貸出されないから廃棄するということではなく、その1、2回のために保存しておくところに図書館の意義があると思う。本の選定は人の思惑・意識を通して行われるもので、たいへん難しい業務であり、専門的な知識を持つベテラン司書が業務についているということは、重要なことである。そういう意味でも図書館の委託・民営化は避けたい。さらに、「平成18年度は直営」といった細かく区切れた保障は、不安定で納得のいかないものである。また、選書のような図書館の目に見えない大切な業務を、市当局はきちんと把握して評価しているようには思えないが、本庁内に業務の大切さをPRするための方策は何かあるのか。
- ●専門職としての司書の採用率について、図書館の規模を考えると、多摩各市の中で調布はトップクラスであるといえる。他の図書館では、委託や正職員数減・嘱託員増が行われている。しかしそのトップクラスである調布市でも、正職員57名に対して嘱託員が150名以上と、嘱託員数が正職員数の3倍を占めている。ここ数年、全庁的に退職者の補充はほとんど行われていない。反論としては、正職員に匹敵する力を持つ嘱託員もいるし、司書資格を有する者をなるべく採用するようにしている。また、図書館に勤め、やりがいを感じている嘱託員の中には、自費で司書資格取得のための講座を受講している者もおり、図書館全体でカバーしあいながら専門性の高い図書館職員の増加に力を入れている。
- ○2点ご質問したい。1点目として、平成18年度調布市立図書館事業概要(案)に「3.分館事業の充実(1)分館の周辺地域の情報を収集・提供し、地域の情報拠点としての機能を高める」とあるが、これは力を入れて真剣に収集・提供する意思があるのか。2点目として、地域資料の分類が知りたい。
- ●1点目については、先日国領分館の利用者懇談会でもご質問いただいた。分館周辺の地域情報を収集・提供していくということは、これまでも細々とやっていたが、平成18年度は、地域情報化の一環として、さらに力を入れていきたい。このためには、システム化および市民の協力が不可欠である。2点目については、調布に関する資料や、調布の市民活動・行政活動に関する資料を、地域資料と呼んでいる。
- ○1点目については、自分は常々分館を地域のまちの図書館と位置づけて考えている。2004年1月20日に承認された、「資料の収集・保存・除籍に関する方針」では、分館が、よく使われる一般的な資料だけがあればいいという位置づけになっているが、分館の位置づけを改めてきちんとしてほしい。2点目については、「地域資料」という枠の中で、「調布市が発行しているもの」と「調布に関する調査・研究がなされているもの」の2種類のデータが一緒になってしまっているために、非常に誤解を招く。データ上は地域資料がたくさんあるように見えるが、実際には調布市が発行した統計調査報告の類がほとんどで、「調布に関する調査・研究がなされているもの」を期待した者には不十分なものである。国領分館で2つをデータ上区別できるようにしたほうがよいと提案したが、却下された。自分も地域の調査を行う者として、新しい資料があると図書館に情報提供しているが、それにも限界がある。調布市立図書館の地域資料収集活動は非常に小規模であり、今後資料収集のためのシステム上の変更・工夫が必要であると考えている。
- ●図書館条例第4条に「郷土資料、行政資料」とあるが、この「郷土資料」に当たる資料の収集や整備をきちんと行うべきであるというご意見かと思う。現在の整理体系では、地域資料はほかの資料とは別にTという分類で統計等を取っている。ご意見のように郷土資料と行政資料を分けるとなると、体系をすべて作り変えることになり、十分な検討がなされていない今、ここですぐに変更についての回答はしかねるが、利用者にとっての有効性等を含め、検討していきたい。
- ○子どもの本を読む会に参加している。図書館の事業案の中でも「学習」に重点が置かれていることは、大変重要なことだと思う。 地域情報については、大きな課題であると思う。知識豊富な司書の存在が調布の宝であると思っているが、2007年問題などを考えるに、今後図書館では地域資料がどのように引き継がれ、収集されていくのか不安である。 図書館協議会のメンバーは、学識者・有識者などとなっているが、図書館の利用者の代表という立場で参加はできるのか。選考方法などについても知りたい。 ブックスタートについて、どのような活動でどのような反応があるのか、実態を知りたい。
- ●地域情報化については、図書館の主要事業として打ち出した以上、皆さまにとって満足できる結果かは別として全力で取り組んでいる。わずか2年で皆様に満足のいくような完成形には持っていけていないのが実情であるが、目標に向けて努力していきたい。専門職の配置については、事務職や嘱託員の配置とともに、毎年市当局に要求している。予算や人員を獲得するために図書館側も努力しているが、市民の声も大きな影響力がある。市当局にもっとも大きな影響力があるのが、「市民の声」である。 図書館協議会のメンバーは、図書館法・図書館条例に基づいて教育委員会で任命している。任命方法自体は、法律による規定がない。今現在は、多くの自治体の委員会がそうであるように、教育委員会で選抜・任命している。全国でいくつかの審議会・委員会が、公募制などを実施しており、それは時代の流れであると考えて、図書館でも検討したい。なお、現在の図書館協議会メンバーにも、利用者や図書館活動にかかわる方々が参加している。ブックスタートについては、現在は、1歳6箇月検診にきた子どもと母親を対象に、図書館で作った子どもに薦めたい絵本のリストや、読み聞かせの大切さについて説明した資料などをセットにして配布している。人生で最初の本との幸せな出会いをぜひ大切にしていただきたいという気持ちをこめて行っている。「子どもの読書活動推進計画」においても、ブックスタートは重要な事業であると位置づけており、今後さらに内容を検討していきたいと考えている。
- ○これまでの話を聞いていると、職員の方々は、万能とはいえないが、良心や誠意を十分持って業務に当たっていることがよくわかる。しかし、視聴覚ライブラリーの移管問題などを見ると、図書館は議会に振り回されがちであるようにも感じる。図書館は政争の具になるようなことがあってはならない。図書館は、もっと市当局や議員に正直に意見をぶつけていいのではないか。これから数年で団塊の世代が退職していくが、図書館の内情を知るものとして外側からサポートをし続けることはできる。図書館は市民が育てるものであり、皆でよくしていくものであると考えている。
- ○先日資料を寄贈しようとしたら、スペースがないので借り手があまりいないような資料は廃棄されることがあるという話を聞いた。具体的には、どのくらいの期間、借り手が何人以下であったら廃棄されてしまうのかを聞きたい。
- ●将来的に、資料によっては多摩地域で最後の1冊が保存されればよいという形になるかもしれないが、現時点では調布市内で最後の1冊となったものはすべて保存している。ただし、もちろん購入していないものは所蔵がないままである。
- ○「子どもの読書活動推進計画」を昨日初めて緑ヶ丘分館で見た。締め切りはとっくに過ぎていたものの、意見は提出した。図書館も大事であるが、学校図書館の司書のことについても、ぜひ教育委員会に伝えていただきたい。やっと週4日になったが、1日5時間では子どもの下校時間まで司書がいられない。また、図書館だよりや、新着図書案内など図書館の情報が掲載されたものを、新聞折込で多くの市民が見られるように配布していただきたい。
- ○つまらないと思えるような本でも、意外な発見があるものである。1冊の本にさまざまな切り口があることを考えて、収集してもらえるとよいと思う。
- ○貴重本については、都立図書館で収集するシステムができるまで各自捨てずにおいて、システム完成後に寄贈をすれば、調布市にあるよりもさらに多くの人がその本を活用できる。
- ○この懇談会の進行の仕方について意見を述べたい。最初の説明が簡潔に過ぎるため、具体的な問題点がよくわからない。新年度の事業計画は、具体的に説明していただきたい。利用者からの具体的な質問に具体的な回答が返ってきて初めて事業内容を理解できた、という場合が多かったので、はじめから具体的に説明したほうが能率よいのではないかと思う。
(4)閉会の挨拶
本日はたくさんの貴重なご意見・ご指摘をいただき、感謝している。市全般に対する図書館の位置づけや、図書館が施策の中で市政にどのような働きかけを向けていっているのかといった、図書館だけではない市全体の問題についてご指摘・ご意見をいただいたと思っている。
懇談会の進行方法について一言ご説明したい。昨年はたまたま指定管理者問題があったため、市民の方々にこれについてのご意見を聞こうと思いテーマを定めた。今回テーマを決めなかった理由は次の2点である。
1点目は、事業計画の報告ということではあるがあくまで案の段階であり、長々と説明をしていくと皆さんの意見交換の時間が少なくなるのではないかと懸念をしたためである。
2点目は、たとえば図書館の椅子が汚いであるとか、職員の対応がよくないであるとかいった、図書館の人・物・予算などのさまざまな問題について、さまざまな角度からお話をいただこうかと思ったためである。しかし集中的に論議をする、という意味では、テーマを決めるべき部分もあったかと反省している。今後も会の持ち方については検討させていただく。
また、地域資料の分類についてのご提案も、具体的に中身や方策について、この場での図書館とのすりあわせは困難であるので、別途ご意見をいただきたい。個別に詰めていかなければならない問題もあるので、どうぞ管理職をはじめとする職員のいる7階へいつでも気軽に来ていただき、膝を交えて話していきたい。