児童資料

調布市立図書館 児童資料収集等に関する方針

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1 目的

調布市立図書館は、子どもたちが読書の楽しさを知り読書する力を身につけることを目的に、子どもの発達に応じた資料を選定・収集して提供する。

「調布市立図書館児童資料収集等に関する方針」は、「調布市立図書館資料の収集・保存・除籍に関する基本的方針」に基づき、中央図書館と10分館の児童資料の収集範囲及び選定・保存における事項を定める。

2 対象

乳幼児、小学生、中学生及び子どもの本と読書に関心のある大人を対象とする。

3 基本方針

子ども時代は、本に対する好みや感性が養われる大切な時期であり、読書の習慣もこの時期につくられるものである。この大切な子ども時代は大変に短いため、できる限り質の高い本を子ども室にそろえて提供できるよう選書を行う。また、年齢や生活体験、読書体験が異なる子どもたちが、個人の興味や読書力に合った本に出会えるように選書には十分留意する。長年読み継がれている普遍的な価値を持つ図書(以下、「基本図書」という。)を中心に、現代の子どもの関心や要求に沿った本も収集する。

子どもを取り巻く環境の変化、学習指導要領の改訂等、社会情勢にも留意する。

4 収集の範囲

原則として子どもを対象に出版された資料を収集する。大人向けに出版されていても、子どもが興味を持って読むことができる資料は、子ども室の蔵書に加える。また、児童文学研究資料や子どもの読書に関する資料も選定の対象とする。

中央図書館と分館は、一体となってそれぞれの役割に応じた収集を行う。中央図書館は、市民の直接の利用に応じるとともに、調布市立図書館網の中心館として分館をバックアップする資料を幅広く収集する。

分館は、子どもが気軽に立ち寄れる図書館として、基本図書と新刊を中心に、地域の子どもたちの要求に合った資料を収集する。

5 複本の必要性

基本図書を常に書架にある状態にしておくためには、複本が必要である。特に利用が多い乳幼児から小学校中学年向けの基本図書は十分な冊数をそろえる。また、調べものや学校の教科学習に役立つ資料も必要に応じて複本で用意する。

6 蔵書の更新

資料の評価は、収集時だけのものではない。その後の子どもたちの利用状況や反応も見て、継続的に評価していくことが大切である。除籍、買替え、保存及び複本の追加によって利用度の高いバランスのとれた資料群になるよう留意し、年月をかけて蔵書を構成していく。

7 対象別収集方針

  • (1) 乳幼児
    • ア 0・1・2歳
      • 保護者や周囲の人々の温かい笑顔や声を通して、子どもが言葉を覚える時期である。人とのふれあいを楽しみながら、言葉への信頼を持つようになる。わらべうたや繰り返しを楽しむ絵本を収集する。また、物の認識が始まる時期でもある。色や形の面白さを伝える絵本、食べ物、動物、乗り物などの赤ちゃん向けの絵本を収集する。安全性を考慮した角が丸い厚紙の絵本にも留意する。
    • イ 3・4歳
      • 身近な大人との関係から、きょうだい、友達など横のつながりが出てきて、外に関心を広げる時期である。物語を楽しみ、物語を遊びに取り入れるようになる。簡潔な言葉で書かれた構成のしっかりした物語絵本を収集する。また、どの子どもも自然現象に興味や好奇心を持ち、科学の本を楽しめる素地を持っている。子どもの知る喜び、関心を育てるために、幼児向きの科学の絵本も収集する。
    • ウ 5・6歳
      • 行動が活動的になり、想像力が養われ、複雑なことも分かるようになる時期であり、長い物語も読んでもらうと理解できる。本格的な昔話や、より複雑な物語絵本、易しい読み物や科学の絵本も収集する。
  • (2) 小学生
    • ア 低学年
      • 一人で文字をたどって読むことができるようになる時期だが、物語をまるごと楽しむにはまだ大人に読んでもらう必要がある。本の楽しさが分かり本への信頼がつくられ、絵本から読み物へと移行する時期でもある。楽しい物語絵本、身近な体験を扱った物語や何世代も読み継がれている空想物語、身の回りの自然を扱った科学絵本などを複本で十分にそろえる。また、一人で本が読めるようになった子どものために、美しい装丁で、挿し絵もふんだんに入った大きな活字の読みやすい本を収集する。
    • イ 中学年
      • 学校生活にも慣れ、一段と行動範囲が広がり、それにつれて、関心を持つ分野も広がりと深まりをみせるようになる。創造的で奥行きのある物語や様々な昔話を楽しめるようになる時期の子どもに、基本図書を中心に構成のしっかりした物語を複本で十分にそろえる。また、本離れをしていく子どももいる時期である。読書の習慣を継続的に養うため、子どもの興味に沿った本、好奇心をそそる本、読者を物語に引き込む力のある本を収集する。
    • ウ 高学年
      • 読書の本格的な楽しさを知り始める時期の子どもに、読み応えのある長編や定評のあるシリーズものを収集する。また、生活が多忙になって読書する時間が短くなる傾向にあり、読書力の個人差も広がるが、興味の対象は多岐にわたり特定の分野への関心が深くなるため、幅広い分野で、易しく書かれたものから詳細なものまで収集する。
      • 現実の自分の生活を重ねてみることのできる本、身近なものから広い世界へと目を向けさせてくれる本などをそろえる。
  • (3) 中学生
    • 思春期に入り、様々な葛藤の中で自らの生き方を模索し始める時期である。複雑な社会を生きる子どもたちに、多様な生き方、未知の世界を示し、人間の尊厳や希望を語りかける本をそろえる。
  • (4) 図書館利用に障がいのある子ども
    • 資料をそのままの形で利用することが難しい子どもたちに、布の絵本、点字付き絵本、録音図書、マルチメディアDAISY、大活字本など、読書の障がいを取り除き、又は軽減する資料を収集する。その収集内容については、「調布市立図書館利用支援サービス用資料収集等に関する方針」にゆだねる。
  • (5) 子どもの本と読書に関心のある大人
    • 児童文学研究資料、子どもの読書に関する資料をそろえる。わらべうた、昔話、伝承あそびなど、保護者や教師、保育者などから要求の多い分野の資料は、児童書に限らず幅広く収集する。

8 分野別収集方針

  • (1) 絵本
    • 絵本は子どもが最初に出会う本であり、これからの長い読書生活につながる大切なものである。質の高い本を種類、量とも、十分にそろえることが必要である。
    • 絵を見るだけで物語を理解することができ、文章は簡潔で美しく、絵と一体となっている絵本を収集する。
    • 物語絵本のほか、乗り物絵本、知識の絵本、言葉・詩の絵本、昔話絵本など、子どもの興味に合わせた分野にも留意して選定する。また、集団での読み聞かせに適した大型絵本を収集する。
  • (2) 紙芝居
    • 紙芝居は日本の伝統的な文化である。演じて楽しむという特質を十分に考慮して収集する。
    • 行事の由来、防災防犯、交通安全など、保育や教育の場で利用されるテーマに留意する。
  • (3) 昔話
    • 昔話は長い間世界中の人々の間で、親から子、孫へと語り伝えられた口承文芸である。現代は昔ながらの伝承が難しくなっているが、昔話はこれから成長する子どもに生きる力と喜びを与えるものであり、子ども時代にぜひ出会ってほしいものである。
    • 昔話の語り口が生かされている再話、語り継がれてきた話に忠実な再話を中心に、読み手の年齢も考慮しながら種類を多く集める。再話者にも留意する。世界各国、日本の各地方の資料を幅広く集める。
  • (4) 総記
    • 子どもの自発的な疑問や宿題などの調査研究に応えられる百科事典、年鑑、統計類を中心とした資料を収集する。
    • コンピューターに関する資料、子どもへの読書案内となる資料にも留意する。
  • (5) 哲学・心理学・宗教
    • ア 哲学
      • 人生や生き方について悩んだり考えたりする子どもに向けて、指針となる本を収集する。 
    • イ 心理学
      • 錯視や占いなど子どもも興味を持つ分野である。心身ともに成長過程にある子どもに、科学的に書かれたものを提供できるよう選定する。
    • ウ 宗教
      • 子どもにも分かりやすく書かれた世界の宗教の本をそろえる。神話にも留意する。
  • (6) 歴史・伝記・地理
    • ア 歴史
      • 日本史の通史は正確で信頼性のあるものを収集する。
      • 考古学、遺跡に関する資料は最新の研究成果に留意する。
      • 近代、現代史は教科での学習を補える資料を収集する。
      • 歴史観の相違から記述に差があるため、異なる出版社の一定水準に達したものを数種類そろえる。
      • 戦争についての本は、その体験を風化させないよう、客観的で事実に基づいて書かれた資料を積極的に収集する。
    • イ 伝記
      • 伝記は物語性を重視し、その行動・業績を通して被伝者の性格や生き方を伝えるものである。歴史研究である伝記は、時代背景や時間の流れが理解できる年代の子どもが読者対象にふさわしい。この年代を対象として、教科書で取り上げられたり、子どもが興味を持つ人物について、客観的な視点で、できるだけ正確に書かれたものを収集する。しかし、幼年向きの伝記も一定の需要があるため、偉人伝ではなく事実を正確に伝える書き方のものを選定する。
      • 人名事典、人物事典も収集する。
    • ウ 地理
      • 日本国内及び世界各国の自然、暮らし及び産業に関する資料を収集する。
      • 東京、関東近県及び姉妹都市についての資料は積極的に収集する。
      • 修学旅行、体験学習に役立つ資料にも留意する。
      • 地図の見方を学べる本、地図帳は新しい情報を扱った資料を収集する。
  • (7) 社会科学
    • 社会の仕組みについての基礎的な知識が得られる資料を収集する。
    • 自分と社会の結びつきや様々な人が共に生きる社会について考えるきっかけとなる資料を収集する。
    • 暮らしや学校生活の身近な問題から、国内、世界的な情勢を扱った本まで幅広く収集する。
    • 職業に関する本は、子どもが様々な仕事の内容を知り、将来像を描き、進路を考える助けとなる資料を収集する。
    • 防災教育に役立つ資料は、積極的に収集する。
    • 障がいに関する本は、バリアフリー、ユニバーサルデザインなどについて分かるものや、子どもが障がいを理解できる資料を収集する。
    • 年中行事、祭礼及び食物や服装の歴史は、図版や写真が豊富で分かりやすいものを収集する。
  • (8) 自然科学・医学
    • ア 自然科学
      • 科学的、合理的なものの見方、考え方が身に付き、子どもたちの疑問に分かりやすく応えてくれる資料を収集する。
      • 子どもを自然界の森羅万象へと誘い、自然に対する興味や関心を深める資料を収集する。
      • 子どもの旺盛な知識欲に応えられるよう、多様なテーマの資料を収集する。
      • 子どもの発達段階に応じて、易しく書かれた科学の本、図や写真が豊富な図鑑、詳細に書かれた読み物や解説書など幅広くそろえる。
      • 科学技術の進歩に合わせ、新しい情報を扱った資料に留意する。
    • イ 医学
      • 子どもは自分の体について興味を持つものである。体の構造、各部の機能など人体についての資料は、正確で新しく科学的な内容のものを収集する。
      • 栄養、健康、病気、医療、アレルギー、依存症などの資料にも留意する。
      • 身体的発達、生殖と誕生及び性については、正確で簡潔な表現の、人間の尊厳を守るように書かれた資料を収集する。
  •  (9) 工学・家政学
    • ア 工学
      • 最新のデータや情報に基づいて正確に書かれており、子どもが科学技術への興味、関心を深めることができる資料を収集する。技術書のほか社会的、歴史的観点から論じた資料も収集する。
      • エネルギー、自然保護及び環境問題の資料は、易しく解説したものから高度な内容のものまで幅広くそろえる。また、現在論議を呼んでいる問題に関しては、著者の立場、観点に注意し、客観的な内容のものを収集する。
      • 乗り物の本は、年齢を問わず人気があるため十分に種類をそろえる。
      • 発明発達の歴史、物の製造方法、工程及び仕組みについての資料は、図や写真などを用いて分かりやすく書かれたものを収集する。
      • 工作の本は、様々な素材を扱ったものを幅広く収集する。伝承おもちゃの作り方も需要が多いため留意する。また、子どもの年齢や要望に応じて提供できるよう資料をそろえる。
    • イ 家政学
      • 家庭科の学習や生活技術の習得に役立つ資料を収集する。
      • 手芸・料理などは、子どもが安全に取り組むことができ、また楽しめる資料を収集する。
  • (10) 産業
    • 社会科に関連した部門で調べ学習のテーマになることも多い。各種産業に関わる多様な資料を収集する。特に農業、酪農、林業、水産業及び流通の本に留意する。
    • ペットの飼い方や草花の育て方の本は、実用性の高いものを収集する。
    • 運輸、交通の本は需要が多いため、種類を多くそろえる。
  • (11) 芸術・スポーツ・娯楽
    • ア 芸術
      • 子どもの鑑賞力が養われ、創造の喜びと尊さを知ることができる資料を収集する。
      • 芸術家の業績を伝える資料を収集する。
      • 美術作品を扱った資料は美しい図版、鮮明な写真を使ったものを収集する。
      • おりがみや紙工作の本、楽譜集、楽器の本及び劇の脚本をそろえる。
      • 国内外の伝統工芸、伝統芸能の本に留意する。
    • イ スポーツ
      • 各種スポーツの歴史、ルール、練習法及び選手についての資料をそろえる。
      • 子どもに人気のあるスポーツの本は種類を十分に用意する。
      • オリンピック、パラリンピックなどの世界的な競技大会に関する本にも留意する。
    • ウ 娯楽
      • 囲碁・将棋やなぞなぞなど昔からある娯楽に加え、子どもたちの流行にも留意して収集する。
      • 実用性の高い本を種類、量ともに十分そろえる。
  • (12) 言語
    • 日本語、英語及びその他の外国語についての資料を収集する。マーク・記号など多様な文字や言語に関する資料にも留意する。
    • 作文、手紙や日記の書き方、話し方の本は、実用的で分かりやすいものを収集する。
    • かぞえうたや回文など、日本語の豊かさを知ることができることばあそびの本にも留意する。
    • 辞典は、国語、漢字、英語等の学習に役立つものを数種類用意する。
  •  (13) 文学
    • 物語は、美しい日本語で書かれていて起承転結があり、登場人物が生き生きとして子どもが共感できるものを収集する。外国の物語は、訳が分かりやすく極端に省略されていないものを収集する。基本図書、特に幼年童話は常に書架に備えておけるように十分な複本を用意する。本を読み慣れていない子どもに向けて、読書の導入となるように、易しく読みやすい本も選定の対象とする。
    • 古典は、原作の持ち味を保ちつつ、それ自体として文学の基準を満たしている分かりやすいものを収集する。
    • 全集は、定評のある作家の個人全集を収集する。
    • 詩、俳句及び短歌は、鑑賞と創作の両面に留意して収集する。
    • ルポルタージュは、歴史的な体験や、子どもに知ってほしい様々な人の経験が、子どもに理解できる書き方で書かれているものを収集する。
    • 幼児から中学生まで、幅広い年齢の子どもの要求に応えられるように本をそろえる。
  • (14) 児童資料研究
    • 子どもの本と子どもの読書に関する一般図書を収集する。
    • 児童文学論、児童文学史、作家作品研究及び各種リスト(推薦図書リスト、テ-マ別リスト等)を収集する。
    • 雑誌やパンフレット、子どもの読書推進に関わる団体の機関紙等も選定の対象とする。
  • (15) 地域資料
    • 子どもが調布を理解するのに役立つような歴史、自然、産業、交通などに関する資料を網羅的に収集する。また、多摩地区、東京都及び調布市と交流のある地域(八ヶ岳、木島平等)に関する資料に留意する。
    • 利用の集中する主題については、複本や類書を用意する。
    • 子ども向きの地域資料は少ないため、大人を対象とした資料であっても必要な資料は積極的に収集する。
    • 図書以外のパンフレット・リーフレット類、地図なども収集する。
  • (16) 外国語資料
    • 外国語資料は、定評のある絵本や読み物を中心に、原則として原書と同じ言語で書かれたものを収集する。
    • 国際的な賞(コルデコット賞、ニューベリー賞等)を受賞した作品にも留意する。
    • 外国語を母語とする子どもたちが日本の作品を楽しめるように、外国語に訳された日本の絵本にも留意する。

9 保存

将来にわたる利用に備えるため、必要な資料を保存する。

各分野の歴史的価値が高い資料、類書が少ない資料及び品切れ・絶版で入手が難しい資料に留意し、最低1冊は保存する。ただし、実用書はこの限りではない。

調布市立図書館が発行している基本図書リストに掲載した図書は、特に留意して保存する。

再販された資料は、その元となる資料も必要に応じて保存する。

 平成30年12月25日
令和4年3月24日改訂
令和5年3月31日 改訂